>WRITER
笑い声の響き渡る教室に静寂が訪れ始める。
突然教室の扉が開いたからだ。
「葛城先生、騒ぐのは結構だがもう少し静かにしてくれないか」
この学校で一番まともな男性教師である。
「あっ、加持さ〜ん」
「あっ、加持くん。ごめ〜ん」
アスカとミサトがほぼ同じに声を上げる。
「おまえなぁ。学校で君づけはやめろって言っただろ」
「わかったわ」
そう答えると引き締まった先生の顔に戻る。
「はい。みんな静かにして!」
まだ残っていたざわめきが収まる。
しかし、次の瞬間また弛んでいた。
「加持くんは隣の教室に帰っていいわよ」
「おまえな〜」
加持は何かを言いたかったようだが、自分もそんな話をしている暇はないので戻っていった。
「さてと、じゃ話を戻しましょうか」
教室の隅から教壇にもどって話を続ける。
「あれっ?シンジくんなに突っ立てるの?」
>SHINJI
ミサト先生に呼びかけられてぼくはハッと気づいた。
どうやら今までボーっと立っていたみたいだ。
サッと座ると、周りで何人かくすくす笑っているのがわかる。
そんなぼくを無視して先生は話を続けた。
「とりあえず綾波さんは……シンジくんの隣に座ってもらえるかしら」
「「えっ」」
「え〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ」
ぼくとアスカと転校生の声が重なる。
ぼくと転校生は短く声を上げていた。
アスカはいかにも嫌そうに否定的な声を上げる。
アスカがそんな声を上げた理由は簡単だ、アスカの席はぼくの席の斜め後ろにある。
しかも、ぼくの席は窓際にある。
つまりぼくの隣の席という事はアスカの前の席でもあるわけだ。
「先生、なんでわざわざ私の前に……」
「だって面白そうじゃない」
「「……………………」」
ぼくとアスカはいつもの事といえ何も言えなくなった。
「それじゃ、あそこに座ってもらえる?」
そう云って先生はまだ持ち主のいない机を指した。
「はい。わかりました」
そう云って彼女はこちらに歩いてきた。
僕は無意識のうちに彼女を見つめていた。
いや、クラスのみんなが見つめている。
席に座る直前で彼女が小言で話しかけてきた。
「さっきはごめんね」
「えっ」
意外な言葉を聞いて僕は少し驚いた。
彼女の方に振り向いたとたんクラス中の視線がこちらに集まっている事に気づいた。
いきなりやって来た転校生の美少女にパンツノゾキ魔呼ばわりされ、しかも僕の隣の席にその転校生がやって来たんだ。無理はないかもしれない。
そんなみんなの冷たい視線から救ったのは意外にも先生だった。
「もう一つ話があるのよ。実は今日もう一人転校生が来るはずだったんだけど時間になっても来ないのよ」
救ってくれたのはありがたかったけど、言葉は冷ややかなものをを感じる。
「えっ、一人じゃなかったんですか?」
クラスの誰かがそう言った。
「私は転校生が来るって言っただけ」
そうだったけ?
「取り合えず名前だけは言っておくわ。名前は……」
EPISODE:1 Two transfer
>SHINJI
次の授業との合間に教室に居づらくなってぼくは教室から抜け出していた。
次の授業は10分後なので少し位出ても大丈夫だった。
彼は校庭に差し掛かった時に現れた。
どこからともなく鼻歌が聞こえてくる。
音の先には朝日に照らされて銀色に髪を輝かせた少年が学校の石碑の上に座っていた。
その目はまるで夕日に染まったような赤い瞳をしていた。
「歌はいいね」
「え?」
「歌は心を潤してくれる。人類の生み出した文化の極みだよ」
「そう感じないか?碇シンジ君」
「なぜ僕の名を?」
「知らない者はいないさ。アスカという女性を幼馴染みなのをいいことに、一人占めしているらしいじゃないか」
「そう…………」
誰だよそんな噂を流したのは……
この時になって彼の名前を聞いていなかった事を思い出した。
「あの、君は?」
「僕はカヲル。渚カヲル。君と同じ2ーAの生徒。転校生さ」
「転校生!君が?あの……渚くん?」
「カヲルでいいよ。碇くん」
「僕も、あ、あの、シ、シンジでいいよ。でも……」
「でも?」
「ミサト先生怒っていたよ」
しばらくの沈黙の後、1限のチャイムと共に僕とカヲルくんは教室に直行した。
>WRITER
10分程度話はさかのぼる。
場所は2ーAの教室だ。
もう一人の転校生の話を終えるとミサトは次の授業の用意をしに教室を出て行った。
自分たちのクラスのHRさえ終れば周りのクラスの迷惑など気にしないそのため生徒はざわめいている。
シンジは教室に居づらくなり教室を出て行こうとしていた。
その様子を周囲の人々と違う目で2人の少女は見つめていた。
一人はアスカ、もう一人は転校生の少女だった。
蒼い髪の少女は彼が教室を出ていったのをその茶色い瞳で見てチャンスと思い席を立ち上がる。
しかし席を立った時点で彼女は呼び止められた。
「綾波さん」
「えっ」
視線を声のする方に向けるとそこにはさっき注意を促していた娘がいた。
「えーっと、あなたは?」
「あっ、ごめんなさい自己紹介がまだだったわね。私は、洞木ヒカリ。このクラスの委員長をしているわ。よろしくね」
「こちらこそ、よろしくね」
「たぶん次の授業でみんなの自己紹介をすると思うわ」
次にヒカリはもう一人の少女にも声をかけた。
「アスカ?」
アスカは教室のドアをぼーっと見つめていた。
「アスカ!」
「えっ」
クスクスっとヒカリが笑った。
「アスカと綾波さんあたしが声をかけたら同じ反応するんだもん。可笑しくって」
2人はお互いを見つめて目が合ったとたん目をそらした。
ヒカリはそんな2人を見て笑いが込み上げて来た。
”なんとなく似てるわねこの2人……”
ヒカリはそう思わずにいられなかった。
>SHINJI
教室のドアを開けると僕とカヲルくん以外はみんな集まっていた。
つまりミサト先生もいる……
妙に殺気立った視線が僕達を貫く。
「あ〜ら、お早いお帰りね」
め、目が座っている……
「シンジ君、席に座っていいわよ」
「は、はい」
ぼくは慌てて自分の席に向かった。
つづけて先生はカヲルくんの紹介を始めた。
「さっき話したもう一人の転校生を紹介するわ」
明るい言葉と裏腹に顔は怒りを隠せないでいた。
「渚カヲルです。よろしく」
先程までのミサト先生の重圧のせいで何も言えずにいた女生徒が感嘆の声をだした。
まあそれも当然かもしれない、男のぼくから見てもカヲルくんは美少年と言える。
>WRITER
彼に感嘆するものも約半数だけだった。
残りのほとんどは言うまでもない。このクラスの男子だった。
「クソー」
「気に入らんやつや」
「ライバルが増えたか」
等々愚痴をこぼす。
しかしそんな考えを持たないものもわずかにいた。
”あの顔は儲かるぞ、今日はなんてラッキーなんだ”
”なんで転校して来た早々シンジと仲良くしてんのよ。まったく今日はイライラするわね”
”あの男の子、碇くんと同じ感じがする”
などである。
いつもの当たり前の空間に訪れた2人の転校生
そして物語は始まっていく……