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>WRITER
あの後、2人の転校生は引っ越ししたばかりの部屋を整理するために家へ帰って行った。
教室はいつもと違い転校生の話題で溢れていた。
その中でシンジは言葉と云う名の攻撃を受けている。
注目の対象となるに相応しいはずの2人の転校生、しかしその対象となるべき2人はいない。
それなのにシンジは自分たちの知らぬ間に転校生と会って親しそうにしていた。
そのため、当然のように目標はシンジに定められた。
その攻撃の回避方法をシンジは持ってはいなかった。
その日の帰り道、それは朝とは違いいつも通りの帰り道だった。
シンジの隣にアスカがいるのもいつも通りだった。
そして何気ない会話をする。
しかし、その会話はいつもよりはずまなかった。
まるで二人の間に壁ができたかのように……
第弐話 フィールド
>SHINJI
ぼく達家族とアスカが住んでいるマンションは第三東京市の端の方にある。
なぜか父さんが管理していて、アスカの両親は日本にいない。
その為、アスカは隣で一人暮らしをしている。
マンションのキーはDNA情報とカードで開く。
DNA情報は自動的にスキャンされるので実際にはカードを通すだけになっている。
そんな訳でぼくはカードをスリットさせた。
その時ぼくは気づかなかった。
ぼくがまた有りがちなパターンにはまっていることに……
>WRITER
その頃、アスカは隣のドアから家へと入っていった。
「今日は朝からやなことばっかりね」
そう言いながら靴を脱ぎ捨てる。
「シンジは転校生にでれでれして、休み時間に入っても周りに誰かいるし、話をしてもそっけないし」
そう言いながら鞄をドサッと落した。
シンジ達家族の住むマンションは基本的に一戸一戸、同じ形をしていた。
違いは左右対称なだけである。
まず玄関に入ると廊下が左に折れている。
その廊下の突当たりを右に入ると最初にキッチンがあり、その奥にリビングルームがある。
そのリビングルームとくっついて左にひと部屋あり、右に廊下を少し行ったところに二部屋ある。
シンジの部屋はその二部屋のうち廊下から左の部屋だった。
自分の部屋へと向かうためシンジはいつも通りに靴を脱ぎ、いつも通りにキッチンを通ろうとしていた。
そんな時、突然右から音が聞こえた。
シャーーッ
シンジは一瞬自分の耳を疑う。
それはそうだろう。
この時間に誰かいる、いや、入れるはずがないからだ。
しかしその音を肯定するように開くはずがない、目の前のアコーディオンカーテンが開ききる。
次の瞬間、彼は自分の目を疑っていた。
「あ、綾波さん……」
そう、カーテンの向こうから現れたのは今日転校してきた少女だった。
その身体には大きめのバスタオル一枚しか付けていない。
シンジもレイも既になぜここに彼女(彼)がいるのかという疑問は頭の中から消えていた。
そしてただ自分の目の前の相手を見つめてそのまま動きを止めていた。
>SHINJI
「シンジー」
その声でぼくは飛んでいた意識を取り戻した。
まずすぎる。
ぼくはここに入ることのできる一人の少女を思い出していた。
この状況で言い訳をしてもアスカに綾波さん、もとい火に油状態だ。
ぼくがどうするか考える前に目の前の彼女は先に行動していた。
彼女とぼくの間に先程とは逆にカーテンが割り込む。
閉じたとほぼ同じにぼくの後ろから声がかかってきた。
>WRITER
「なによいるんじゃない」
ビクッとシンジは身を震わせた。
そしてゆっくりと後ろを振り向く。
「ア、アスカ……」
彼女は昼間シンジとまともに話すことができなかったので来たのだろう。
「なにおどおどしてんのよアンタ」
「お、おどおどなんてしてないよ」
そう言いながらもシンジの右指はそわそわしていた。
「どもってるじゃない」
「ど、どもってなんていないよ」
「……アンタ何か隠しているんじゃないでしょうね」
「な、な、何も隠してないよ」
「さっきよりどもっているわよ」
「…………」
アスカは昼間シンジとまともに話ができなかったのでやってきたのだが、そのシンジがこの状態だ。
アスカの中で苛立ちが募っていく。
>SHINJI
「もういいわよバカシンジ!」
今日3発目のビンタを覚悟したぼくは目を瞑った。
しかしいつまで経ってもその一撃がぼくの元へやって来ることはなかった。
「あれっ?」
疑問に思いながら目を開くとそこにはもう彼女はいなかった。
静まり返った空間の中、わずかに自動ドアの閉まる音が聞こえてきた。
混乱して頭の中がごちゃごちゃになっていたぼくに綾波さんが声をかけてきた。
「ねえ碇くん」
「何?」
「悪いけどちょっと玄関の方に行っていてくれる?着替えここにないんだ」
彼女がなぜここにいるのか知りたかったがバスタオル一枚でいることを思い出しぼくは素直にしたがった。
しかし、玄関に行った直後にぼくの本能と理性が争いを始めた。
"さっきはよく見てなかったからもう一度……"
"でも見つかったら彼女に嫌われる"
"でも一度見た事だし"
"いやあれは不可抗力だ"
"でもまた見たい"
"それよりアスカを追わなくていいのか"
そんなせめぎ合いがしばらく続いた。
>WRITER
「……りくん、碇くん」
座りながら自問自答を繰り広げていたシンジは声をかけられて頭を上げた。
まだ濡れている青い髪が彼女を大人びて見せた。
そんな彼女をぼーっと見つめる。
「なんかぼーっとしてること多いね」
そう言いながら微笑んだ彼女の顔はシンジの思考をまた停止させた。
>SHINJI
夕食の少し前の時間アスカはいつも通りやって来た。
父さんと母さんはいつも帰りが遅いため夕食はいつもぼくが作っている。
キッチンに入って来たアスカは予想通りに驚いた。
「な、なんであんたがここにいるのよ!」
「シンちゃんの両親が帰ってきてから話すわ」
「シ、シンちゃん……」
周りの空気が重みを増していく。
アスカの眼光がこちらへと注がれる前に綾波さんがアスカに声をかけた。
「ここに住む以上碇って名字は使いずらいし、作者の都合上その方が良いらしいから、シンちゃんて呼ばせてもらうわ」
アスカは一瞬逡巡した後、ふと気付いた。
「住むってアンタここに?」
そう言いながらアスカはフロアを指した。
>WRITER
その時だった。
「ただいまー」
"あれっ?"
シンジとアスカはそう思った。
無理もないその声は明らかにシンジの母、ユイのものだった。
シンジの両親は仕事の都合で帰りが遅くなる事が多かった。
いつもより早い帰宅に驚くのも不思議ではない。
すぐにキッチンの入り口に人影が見えた。
うっ
シンジは一瞬引く。
父親とはいえ2m近い身長とどこか殺伐とした風格を併せ持つゲンドウが突然現れた時の威圧感にシンジはいまだに慣れることができずにいた。
今後もなれることはないかもしれない。
続けてユイが入ってくる。
「あら、アスカちゃんもいたのねちょうどよかったわ」
ゲンドウもユイもレイがいることをちっとも気にしているようには見えない。
「どういう訳か説明してください」
シンジが聞く前にアスカが質問を投げかけた。
「とりあえず席に掛けたまえ」
ゲンドウはそう言いながら自分もキッチンの席へとついた。
ユイは夕食の支度を始めた。
長方形のテーブルなので席はシンジの左隣にアスカ、正面にゲンドウ、ゲンドウの隣にユイが座るのがいつもの座りかただった。
そのためレイはシンジの右斜め前方の一辺にイスを持ってきて座った。
「さてどこから話そうか……」
シンジは喉を鳴らした。
アスカもレイもなにも言わない。
唯一ユイの料理をする音がキッチンに響く。
ゲンドウはしばらく考えた後話しだした。
「とりあえず今日の夕食についてだが……」
ユイ以外は思わず突っ伏してしまった。
「あ、あのぉ、レイさんについて教えてもらいたいんですが……」
アスカがそう聞き返す。
「ああ、そうだったな」
シンジは父が本当に解っているのか少し不安だった。
再び静寂が訪れる。
ゲンドウは間を開けてから話しはじめた。
「実はシンジとレイくんは許婚なのだ」
「えーーーーーーーーっ」
アスカがこれ以上ないような大声を上げる。
「というのは嘘だ」
ピシッ
場の空気が凍り付く。
「…………………………………………………………………………………………………………」
つづく
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