>WRITER
来月の小遣いの貰える予定のなくなったシンジは出費を抑えて節約しながら生活していた。
おまけにこの間のテストの後にトウジに「うらぎりも〜ん」と、何度も繰り返し言われたことでショックを受けて3日間落ち込んでしまっていた。
その3日の間、アスカを抜かしての上位4名が転校生によって占められたことが話題になっていた。
一部の生徒は慌て、一部の教師は困惑していた。
アスカはレイの生い立ちを聞き、壁が壊れたことによって心理的余裕ができた為か、以前よりその間にあった垣根は低くなっていた。
5月末日
今朝もシンジが目覚めようとしていた。
朝焼けの中、シンジがトウジ達と遊びに行くということでアスカは彼を起こしに来ていた。
ベッドの前に仁王立ちでアスカが立っている。
「シンジ!起きるのよバカシンジ!!」
アスカの口調は以前と変わっていなかったが音量はいくらか下がっていた。
しばらく繰り返すが当然なかなか起きない。
布団を剥がそうとしたが一瞬躊躇し、視線はシンジの身体をゆっくりと下りていく。
その目は1点で止まった。
パーン!
「キャー!!エッチ!バカ!スケベ!ヘンタイ!信じらんな〜い!」
>SHINJI
頬に走る痛みでぼくは目を覚ました
「いったー、何すんだよアスカ」
叩かれた頬を抑えながら抗議する。
「あんた毎回毎回なんで…………」
言い返したアスカの言葉の語尾が口の中に消えていく。
少し俯いていたアスカはそのまま振り返るとそのまま襖を閉めずに出ていった。
ぼくは何がなんだか解らずにいろいろと原因を思考しているうちにふと下半身に意識がいく。
……………………
>WRITER
キッチンには朝食のふくよかな香りが立ち込めていた。
既にテーブルの上には和食が並んでいる。
そんな中ゲンドウはいつも通り新聞に読みふけっていた。
テレビ欄の裏のページの左上の隅を見ていたかと思うとにやりと笑う。
ユイはそんなゲンドウを見てにこにこしていた。
そんな時だった。
パーン!
「キャー!!エッチ!バカ!スケベ!ヘンタイ!信じらんな〜い!」
声が聞こえてからしばらくしてアスカがやってきた。
少し俯きながら椅子に座る。
"あら?アスカちゃん顔が紅いわよ"
と思わず言いたくなったユイだが"若いって良いわね〜"と考えを改めた。
その日の昼下がり。
ゲンドウとユイはショッピングに出かけ、シンジはトウジとケンスケと一緒にゲームセンターに行くということで13歳の少女が2人、リビングでくつろいでいた。
アスカは寝転がりながら雑誌を読み、レイはテーブルの傍に座りテレビを見ている。
2人の間で交わされる会話はその年頃の女の子にしてはあまりにも少ない。
「ねえ、アスカ」
そう言ってアスカを見るレイ。
「なに?」
答えつつもアスカの目は雑誌に釘付けになったままだ。
「アスカの両親はどうしてるの?」
「……いないわ」
「えっ」
「パパは誰だか知らないし、ママは去年死んだから……」
「……ごめんなさい」
あぐらをかき、雑誌から視線を外しレイへと向ける。
「誤ることなんてないわ。大体あんたも似たようなもんじゃない」
「……………………」
「去年ママが死んでから遠い親戚にあたるおばさまの所に来たの、子供の頃に家がお隣だったこともあって親しかったし、幸いお金はあったから最低限の負担でここに住まわせてもらってるわけ」
まるで他人事のように話すアスカ。
「……そうなんだ」
「養子みたいなもんなんだけど戸籍には入ってないからまあ単にお隣さんね」
話の内容とは違いアスカは明るかった。
「まあ、壁ないけどね」
そういってアスカは親指で消えた壁を指差した。
レイは唖然とアスカを見つめた。
ぷっ、あははははは……
張り詰めていた空気は崩壊し2人は笑いさざめいた
と、笑いも収まった頃ふと思いついたようにアスカがレイに話し掛けた。
「そうだわ、いちおう言っておくけど来週はシンジの誕生日よ」
「来週って、……来週の土曜?」
「そうよ来週の今日、つまり6月6日」
「え〜〜〜〜っ、聞いてないよそんなの〜」
不服そうに頬を膨らませるレイ。
「だって誰も言ってないもの」
「それもそうだけどぉ〜」
「プレゼント買うんだったら明日行かないと買ってる暇ないわよ」
「アスカもうプレゼント決めたの?」
「まあね」
「ずるいよアスカ」
「明日買いに行くけど、一緒に来る?」
「うん、行く行く」
大げさなぐらい頭を前後するレイだった……
EPISODE:3.2 Lovechildren
>SHINJI
ここはさまざまな音が飛び交っている。
声、その声を取り込んだ電子音、それを発する電話の音、物のぶつかる音、そして音楽のデジタル音、それらが混ざり合いある人には雑音を、またある人には高揚感を与える。
約束の時間になんとか間に合ったぼくはトウジ達と一緒にゲーセンの扉を潜った。
「ケンスケ」
入ってすぐにトウジがケンスケに話し掛ける。
「ん?」
「あの金髪のやつ」
トウジの指を指した先には人だかりができていた。
その中心に金色の髪をした女性がいる。
最新の3Dシューティングゲームをしているようだけど……なんだろう?この感じ……
ぼく達がその人だかりに近づくと
「始めまして、碇シンジ君」
そう言いながらその金色の髪をした彼女が急に振り返る。
振り返った彼女は鼻の高い白い顔の綺麗な顔立ちをした美女だった。
すらりとした長い髪が知的な印象を与える。
しかし、彼女の瞳を見た途端鳥肌が立った。
炎のような威圧感を持った真紅の瞳。
でも、なぜこの子ぼくのことを知ってるんだろう?
同時にそんな疑問が沸き起こる。
「私はカラミティー・ジェーン。キャルでいいわ」
そう言いながらも彼女の手はせわしなく動いている。
横からトウジとケンスケが肘を突っつく。
「「なんで彼女がお前のこと知ってるんや(だ)」」
左右からステレオもどきで周囲の音にかき消されそうな小さな声が耳打ちされる。
「知らないよ。ところで彼女誰?」
「知らないやと(だ)!」
今度は周りの音に負けていない。
たぶん彼女にも聞こえたと思う。
が、彼女の表情に変化はなかった。
「彼女はカラミティー・ジェーン(Calamity Jane)、この間隣のクラスに転校してきた女の子だよ」
>WRITER
「同学年なの?」
シンジがそう思うのも不思議ではない。
座ってるがどう見てもシンジより背が高く大人びている。
その時、場がどよめいた。
どうやら画面を見ずにクリアしたらしい。
「ノーコンテニューどころかダメージすら受けてない」
「しかも今よそ見してたぜ」
「どうすればあんなプレーができるんだ」
口々にいろいろな事が囁かれる。
彼女はすっと立ちあがるとシンジの目の前に歩いてきた。
シンジの前に立つと身長の違いがよく判る。20cm近く違うだろう。目の位置もシンジよりかなり高い。
その真紅の瞳がシンジをじっと見つめる。
シンジは今日始めて見た少女の前で訳が解らず立ち尽くす。
「…………」
「…………」
「まだね」
そう言い残すと彼女はシンジの横をゆっくりと通り抜け、出ていった。
>SHINJI
……まだね?
「まだねやなくてまたねやろうが」
トウジがそんな指摘をする。
「で、なんで彼女がシンジの事を知ってるんだ?」
ケンスケが声のトーンを落として聞いてくる。
そんな事を言われてもレイやカヲルくんの時と違って会った覚えすらない。
「知らないよ」
そう答えるしかなかった。
「やあ、シンジくん」
そんな時突然、後ろから声をかけられぼくは驚いた。
「カ、カヲルくん」
いままでここにいたのだろうか?
「どうしてここへ?」
「ちょっと暇をつぶしにね」
「偶然だね」
「いや、運命さ」
そう言って微笑んだカヲルくんの笑みがさっき感じた疑問を解決していた。
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