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>WRITER
もうすっかり日も暮れ、辺りは暗闇に包まれていた。
コンフォート17マンションの11階、11-A-2号室。
そのリビングではこの間のテストと同じように3人の子供、そして1ぴきが座っていた。
テーブルの上には料理が数品上がっている。
ただ、少年の両親は誕生日とはいえ帰ってきてはいない。

「はい、誕生日おめでと」
シンジから目を逸らしてプレゼントを渡すアスカ。
「うん、ありがと」
申し訳なさそうにシンジがアスカの手からそっと受け取る。
「はい、シンちゃん誕生日おめでとう」
笑顔でプレゼントを差し出すレイ。
「あっ、それひっくり返したり強く動かしたりしないでね」
「あ、ありがとう」
照れながらそれを受け取る。
'なんで私がプレゼントをやった時は「うん、ありがと」でレイの時は「あ、ありがとう」なのよ'
海外にいた時から毎年の事でそれが当たり前の受け答えと理解しつつもレイと比較するとちょっと悲しくなっていた。
「開けていいかな?」
「当たり前でしょ」
「うん」
アスカの言葉に棘の刺さるものを感じてか、シンジはアスカのプレゼントを先に開けようとした……
ピーンポーン
その時突然玄関のチャイムが鳴り響いた。

>SHINJI
父さんも母さんもいないのに誰だろう。
ぼくが玄関に向かうと後ろから2人が一緒についてきた。
「やあシンジくん」
ドアを開けるとそこには満面の笑顔を称えたカヲルくんがいた。
その手にはプレゼントらしい箱と買い物袋がぶら下がっている。
「な、なんであんたがここにいるのよ!」
「無論シンジくんに聞いたからさ」
アスカがぼくを睨む。
が、何も言わなかった。
でも、カヲルくんに誕生日の事をいつ言ったんだろう?
……まあいいか
「じゃあ、カヲルくん上がってよ」
ぼく達はリビングのテーブルの4辺にそれぞれ座った。
ペンペンはレイのひざの上に乗っている。
「はい、これプレゼント。今のシンジくんに必要なものさ」
カヲルくんが差し出したのは薄い箱だった。
「ああ、そのプレゼントは後で開けてくれるかな?」
「えっ、う、うん」
「爆弾でも入ってるんじゃないの?」
アスカが茶化す。
中身が気になったがぼくは後で開ける事にした。

>WRITER
シンジは中断されていたアスカのプレゼントを開けた。
「うわぁ」
シンジの発する声を聞いて、アスカは昔を思い出したような笑みを浮かべる。
「ありがとうアスカ」
そういって箱から取り出したのはS○NY製のS-DATだった。
「欲しかったんだよこれ」
シンジが感慨深そうにそのウォークマンを見つめる。
その傍らでカヲルはまだまだ甘いねと言いたそうな顔をしていた。

>SHINJI
ぼくはアスカのプレゼントに続いてレイのプレゼントに手を掛けた。
「そっと開けてね」
レイの言葉に従ってゆっくりとその箱を開ける。
中には小さ目のケーキが入っていた。
中央には
「シンちゃん
シンジ  
誕生日おめでとう」
と書かれたチョコレートが置いてある。
「ごめんね、シンちゃん。あたしお金ないからこんなプレゼントしかできなくって……アスカも作るの手伝ってくれたんだけど……」
「そんなことない、嬉しいよレイ」
和やかな雰囲気になったところでカヲルが動いた。
「ああそうだ。プレゼントとは別にこんなものを買ってきたんだけど。そのケーキと合わせて一緒に飲んでもらえるかな」
買い物袋からビンを2本取り出す。
「……カヲルくん。これってワインじゃ……」
「その通りだよ、まあシャンパーニュのシャンパンだと当たり前すぎるから、ソミュール ブリュットにしてみたんだけど。シャンパンの方が良かったかい?」
そうじゃなくて、ぼくたち未成年なんだけど……
「あら、気が利くじゃない。日本人は固くていけないのよね」
さも当然といった感じで答えるアスカ。
アスカもクォーターじゃないか……
「じゃあ私グラス用意するね」
そう言ってレイがキッチンにグラスを取りに行く。
レイまで……
ぼくは何も言い返す事ができずにその場の流れに従った。
グラスにワインが注がれ、ケーキが5分割される。
「じゃあ、改めて
シンジ
シンちゃん
シンジくん
誕生日おめでとう」
「クエ〜」
「あ、ありがとう」
うれしい気持ちと一緒にぼくは罪悪感にさいなまれていた。

>WRITER
レイとアスカがワインに口を付ける。
カヲルはなれた手つきでグラスを揺らしている。
しかし、シンジのグラスは口元で止まっていた。
「おいしいこれ」
「ほんと、口当たり軽いわねこれ」
そんなレイとアスカのの言葉を聞いてシンジはやっとワインに口を付けた。
「うまい!」
飲んだ感じとシンジのイメージがかなり違っていたのだろう。
シンジは大げさな声を上げた。
「たまにはこう言ったワインもいいだろう」
たまにはと言った言葉が引っかかったがシンジは気にしないでケーキに手を付ける事にした。
シンジのケーキには真中にあったチョコレートが付いてきたがなんとなく勿体無くて先にケーキを食べ始める。
フォークに突き刺された一口のケーキを口に運ぶと、
「シンちゃんおいしい?」
レイが不安そうな目でシンジが食べる様子を見つめる。
「うん、美味しいよ」
「よかった〜」
レイは心底ホッとしたような表情を浮かべた。



  EPISODE:3.3 Happy birthday to you !



>SHINJI
楽しかった。
去年アスカが戻ってきて、今はレイとペンペンが、そしてカヲルくんがいる。
去年までの誕生日にはぼく1人だったから……
いつからだろう。
父さんと母さんはいつも通りの時間まで仕事で帰ってこない。
場合によっては翌日の夜まで帰ってくる事はなかった。
ぼくにとって誕生日は家庭で祝うのではなく、いつのまにか学校という空間で祝われるものになっていた。
それがぼくにとっての当たり前になっていた。

いつからだろう。
ぼくの思考能力はどんどん低下していった……

>WRITER
「ふにゃ〜」
レイの顔は既に真っ赤になっていた。
既に酔い心地といった感じだ。
その隣のシンジも似たような状態だった。
もっともこちらは酔いつぶれていると言った方が正しいかもしれない。
「まったく2人とも情けないわね〜」
アスカがぼやく。
その前のテーブルにはどこから出てきたのか数本のビンと缶、そして器用にビールを飲むペンペンが乗っていた。
「まあ、その2人らしいじゃないか」
グラスを傾けて喋る姿が妙に大人びている。
ワインをクイっと飲み干す。
「じゃあそろそろお暇させてもらうよ」
「じゃあね」
アスカは手首から先だけを軽く振って別れを告げた。
カヲルが出て行くとレイとシンジはいつの間にか寝息を立て始めていた。

>SHINJI
強烈な日差しの中ぼくは目が覚めた。
どうやらもう昼近いようだ。
ぼくの上には毛布が掛けてある。
父さんと母さんは帰ってきていそうにない。
体を起こそうとしたところで、強烈な頭の痛みが襲ってきた。
頭がガンガンする。
ひょっとすると二日酔い……
傍らを見るとレイが寝息を立てて眠っていた。
カヲルくんはいつの間にか帰ったようだ。
アスカの座っていた場所には誰もいない。
毛布はアスカかカヲルくんが掛けてくれたのだろうか……
体を起こすのを止めたぼくは天井を見つめることにした。
ただ何も考えずに見つめる。
「あれ?起きたのシンジ」
声がしたかと思うとキッチンの方からアスカが出てくる。
「あっ、アスカ」
「んっ」
ぼく達の声でレイが目を覚ましたようだ。
「あっ、おはよ〜」
ぼくとアスカを見るなり寝ぼけたような挨拶をする。
「まったく、もうお昼よ」
「う〜ん、アスカ〜、頭が痛いよ〜」
起きようとしたレイが症状を訴える。
「2人とも宿酔ね。薬出してあげるから寝てなさい」
「うん」
「は〜い」
ぼくもレイもおとなしくアスカの言葉に従った。

>WRITER
シンジが再び目覚めたのは夕方近くだった。
レイは既に部屋に戻ったようでリビングにはシンジ1人だった。
まだふらつきながらもシンジは部屋に戻っていく。
襖を開けると彼の机の上にプレゼントが置いてあった。
シンジはなんとかカヲルのプレゼントを手に取るとその箱を開けた。
「……………………」
そのまま固まったようにシンジは動かなかった。
しばらくしてからふと我に返ったように動き出す。
シンジはそれをお決まりのパターンとしてとりあえずベッドの下に隠したのだった。


つづく


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