back to triton 3-3   go to triton 4-2

>SHINJI
ここはどこだろう。
空が曇っている為か何も見えない。
僅かに塩の香りがするけど、波の音は聞こえない。
海なのかな……
でも、足に伝わってくる感触は硬いものだった。
暗い、星すら見えない暗闇。
しばらく立ち尽くしていると遠くからヘリの音が聞こえてきた。
一直線にこっちに向かって来る。
真上に来たかと思うと向けられたライトで僕の目は眩んだ。
ヘリが下りた音がした頃、やっと明かりに目が慣れてくる。
僕の視界に真っ先に飛び込んだもの、それは紅い瞳だった。

「シンちゃん、シンちゃんってば」
目を開くとレイがいた。
「……おはよ」
「おはようシンちゃん。でもあっさり起きたらつまんないのに……ブツブツ
「あれ?アスカは?」
「アスカ風邪引いたみたい」
珍しいな天才は風邪を引かないがアスカの持論だったのに……
「……………………」
レイがじっと僕を見ている。
「……………………」
そのまま動く様子はない。
「あの……着替えたいんだけど……」
「気にしなくていいよ」
ぼくが気になるんだけど……
この後母さんが呼びにくるまで僕は動けないで固まっていた。



  EPISODE:4.1 Dreary dream



>WRITER
シンジは急いで着替えるとアスカの部屋に行った。
彼女の部屋に入るとベッドの上で息苦しそうに寝ていた。
彼女が戻ってきた時から両手で足りる程度しかこの部屋に入ってない気がする。
「アスカ大丈夫?」
シンジの呼びかけに応えることもできずにただ喘ぐ。
「バカシンジ……」
気のせいかもしれないと思うほど小さな声でその声が聞こえた。
「じゃあアスカ、ぼく学校に行ってくるね」
入った時と少し違った顔をしてシンジは彼女の部屋を出た。
キッチンに向かうとそこにはゲンドウがいなかった。
レイとユイは朝食を食べている。
「父さんは?」
いつも一緒に仕事に行ってるのに1人しかいない事を疑問に思ったのだろうシンジが問い出した。
「もう仕事に出たわよ」
「母さんは?」
「アスカちゃんの面倒を見るから休みを取ってあるわ。それより早くしないとまたまた遅刻するわよ」
「は〜い」
シンジはぶっきらぼうな返事をして食べ始めた。

>SHINJI
よく考えるとレイと2人で登校するのは初めてだ。
いつの間にかレイと呼ぶ事にも慣れているし不思議な感じがする。
しばらく進むとあのレイとぶつかった曲がり角に着いた。
ここで彼女と始めて会ったんだよな。
そして今は2人でここを歩いている。
「あの時の事を思い出してたんでしょ」
「うん」
「そういえば最近アスカと仲いいね」
アスカがいる時にはしにくい質問をする。
「うん。最初があんなだったからちょっと抵抗あったけどね」
そうか最初の会話が言い争いだっけ。
「それに、なんとなくアスカ無理してるように見えて……」
その言葉は小さくてぼくには聞こえなかった。

やがて学校の近くまで来ると知っている人影を見つけた。
あれ?前を歩いているのはケンスケとあの妙に大きな転校生じゃ……
「ねえシンちゃん、あれケンスケ君と転校生のキャルって呼ばれてる子じゃないの?」
「そうみたいだね」
なんであの2人が一緒にいるんだろう。
「なんで一緒に登校してるんだろうね?」
思った疑問そのままレイが質問してきた。
「さあ……」
「あの2人、何cmくらい違うんだろね」
「ケンスケはぼくより身長が低いから20cm以上違うと思うよ」
「そういえばシンちゃんと私って身長同じなんだよ、知ってた?」
そう言われてぼくはレイを見た。
確かに全くと言っていいくらい同じ視線だ。
その目が細くなってぼくをじろりと見つめる。
「ひょっとすると気づいてなかったの……」
「ご、ごめん」
話している間に校門に入ったのかケンスケ達はぼく達の視界から消えていた。

>WRITER
「ウッ……うらぎりも〜ん」
教室に入ってきたケンスケに対して言ったトウジの最初の言葉だった。
そのセリフを無視してケンスケは席に座る。
心なしか眼鏡の輝きが増したようだ。
その内心は喜びに満たされてるのだろうか欲望に満たされているのだろうか、それとも混乱か……
そのまま無言で動かずに頭を暴走させていた。
トウジがそんなケンスケを見るのを止めるとシンジとレイが入ってきた。
自分の席の真後ろのケンスケを見てシンジはしばらく彼を観察する。
横を見ると離れた先の席ではトウジがこうべを垂らしていた。
'なんで自分だけ……'と言った心境だろうか。
ヒカリはそんなトウジを見て塞ぎ込んでいた。
シンジは友人と会話するのを諦めて席に着いた。

>SHINJI
トウジとケンスケに話し掛けても無駄のようなのでぼくは先生が来るまでレイと話すことにした。
「なんか教室の雰囲気暗いね」
先にレイが話を切り出す。
「アスカがいないし、トウジが静かだからね。大体アスカが風邪で休むなんて始めてだよ」
「そうなの?」
「うん。天才は風邪を引かないがアスカの持論だからね。キチンと健康管理をしていれば風邪を引く可能性はかなり低いって前に僕が風邪を引いた後に言っていたから……」
「あはは、アスカらしいね」
キーンコーンカーンコーン
ガラガラとドアの開く音がしてミサト先生が入ってくる。。
「起立!礼。着席」
「おっはよ〜。えーっと、今日のお休みは惣流さんね」
妙に明るい声で出欠を確認する。
「シンジくん、惣流さんにプリント持っていってあげてね」
「はい」
「じゃあ今日もみんな元気にすごしましょう」
そのままミサト先生は教室を出ていった。

そのまま2限目に入ってしばらく経ったところで頭がぼ〜っとしてきた。
アスカの風邪を移されたのかな。
そんな訳ないか……

あと10分。
だんだん、授業が耳に入らなくなっ……て…………き……………………………………
た……………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………
………………………………………………………………………………………………

>WRITER
「じゃあ次、碇くん」
教師が声を掛ける。
「…………」
その答えはない。
その眼鏡を掛けた若い教師は視線を教科書から外し、声を掛けた少年を見た。
うつ伏せで机に寄りかかってる。
「碇くん?」
一瞬寝ているのかと思ったが様子がおかしい。
しかもその隣の少女も同じ状態になっている。
訝しいと思った教師が2人の席にやってくる。
「碇くん?」
教師は確認のために声を掛ける。
2人を除いた教室中の目がその場に向けられた。
教師が少年の体に触れる。
「委員長、保健室に行って赤木先生を呼んできてくれ」
「は、はい」
まさか保険医を呼ぶ羽目になると思ってもいなかったのだろう、ヒカリは慌てて返事をして教室からでた。

>SHINJI
……………………

「あ……だ……ま……」

あだま?

「あ……な……た……」

あなた?

「い……の……ち……」

命?

「わ……た……し……」

私?

「……………………」

……………………

>WRITER
「シンジとレイちゃんも帰ってくるなんてね」
リビングに敷かれた布団で横になる2人の子供を見てユイが呟く。
「予定外だわ。しかも学校まで迎えに行ってしかもここまで運ぶのがやっとよ……」
ため息にも似た呟きが洩れる。
「2人とも重くなって……」
そして息子の成長を喜ぶような笑みを浮かべた。
しばらく2人の寝顔を見つめるとやがて看病の準備を始めた。


つづく


back to triton 3-3   go to triton 4-2


To TRITON Page